日本における太陽電池モジュール廃棄規制

コラム
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 日本では、今後数十年のうちに大量の使用済み太陽電池モジュール(PVモジュール)が排出されると予測され、2030年には、中国と米国に次ぎ、世界第3位の使用済みPVモジュール排出国になる見込みである1。差し迫るPV廃棄問題に向けて、日本ではどのような対策が進められているのだろうか。本記事では、日本におけるPV廃棄問題に関する規制や政府主導の取り組みについて、解説する。

太陽電池モジュール廃棄規制の有無と使用済み太陽電池モジュールの取り扱い

  • 日本では、現在、使用済みPVモジュール廃棄に特化した規制は存在しない2
  • 使用済みPVモジュールの処理は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に準拠する。廃棄物処理法によると、使用済みPVモジュールは、基本的には産業廃棄物に該当する。ただし、解体工事等の事業活動を伴わずに、一般家庭から使用済みPVモジュールが廃棄物として排出される場合は、一般廃棄物に該当する場合がある。一般廃棄物に該当するか否かは、市町村に確認する必要がある3

図表 1: 使用済み太陽電池モジュールの取り扱い3

産業
廃棄物
 基本的に、事業活動を伴い発生した廃棄物は、産業廃棄物に該当する。

【例】
• PVモジュールメーカー、施工業者、発電事業者、リユース業者が、使用済みPVモジュールを廃棄物として処理する場合
• PVモジュール所有者(発電事業者、住宅所有者等)が、解体・撤去業者に、PVモジュールの解体・撤去を依頼し、廃棄物として処理する場合
一般
廃棄物
 解体工事等の事業活動を伴わずに、一般家庭から使用済みPVモジュールが廃棄物として排出される場合は、一般廃棄物に該当する場合がある。一般廃棄物に該当するか否かは、市町村に確認する必要がある。

【例】
• 住宅用のPVモジュールを所有者が自ら撤去し、処分する場合
※「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に準拠する。

太陽電池モジュール廃棄問題に備えた政府の取り組み

 日本では、2012年7月に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)」が施行され、固定価格買取制度(FIT制度)が導入された。FIT制度を導入して以来、PVモジュールの設置が急速に増加していることから、将来的に使用済みPVモジュールの放置・不法投棄が多発するのではないかと懸念されるようになった。これを受け、政府は、使用済みPVモジュールの適正処理を促進するために様々な取り組みを進めている。

  • 2015年に、環境省は経済産業省と連携し、太陽光発電設備を含む使用済み再生可能エネルギー設備の撤去、運搬、リユース、リサイクル、適正処理の仕組み作りを目的とした報告書をまとめ、ロードマップを策定した4 5。ロードマップに定めた取り組みとして、環境省は、2016年に使用済みPV設備の適正処理を促進させるためのガイドラインを公表し、2018年には第二版を公表した。ガイドラインには、PVモジュールのリユース・リサイクルについても言及されている3
  • 2021年5月に、環境省はPVモジュールの適正なリユースを促進するためのガイドラインを公表した6
  • 2016年6月に再エネ特措法が改正され、再生可能エネルギー発電事業者がFIT制度の認定を受けるためには、再生可能エネルギー発電事業計画の認定を経済産業大臣から受けることが必要となった。経済産業省・資源エネルギー庁は、太陽光発電事業者向けに事業計画策定ガイドラインを公表し、その中でPVモジュールの適切な解体方法やリユースやリサイクルを含む適正処理についてもまとめている。第一版は2017年3月に公表され、直近の改訂版は、2022年4月に発表されている(2023年2月現在)7
  • 2012年7月に制定された再エネ特措法が2022年4月に改正され、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に改名した。改正に伴い、再生エネルギーを電力市場へ統合していくための対応策として、2022年4月よりフィードインプレミアム(Feed-in Premium:FIP)制度が導入された8。加えて、2022年7月1日よりFIT/FIP認定を受けた10kW以上の事業用太陽光発電設備を対象に、廃棄等に必要な費用の積立制度が導入された。原則として、交付期間又は調達期間の終了日から起算し、10年間の積立が必要となる(詳細の積立期間については、図表2参照)。経済産業省・資源エネルギー庁により、「廃棄等費用積立ガイドライン」が2021年9月に公表され、2022年4月に改定されている9

図表 2: 使用済み太陽電池モジュールの取り扱い3

(1)
原則
• 積立開始:交付期間又は調達期間の終了日から起算して10年前の日以降、最初の検針日
• 積立終了:交付期間終了日
(2)
例外
 上記(1)の積立開始日が2022年6月30日以前に到来する場合(2022年6月30日以前に稼働開始した発電設備):
• 積立開始:2022年7月1日以降、最初の検針日
• 積立終了:交付期間終了日

まとめ

 日本では、使用済みPVモジュール処理に特化した法的規制は存在せず、PVモジュールの大量廃棄及び放置・不法投棄に対する懸念を受け、政府はこれまでにロードマップやガイドラインの策定を進めてきた。2022年7月には、廃棄等に必要な費用の積立制度 (FIT/FIP認定を受けた10kW以上の事業用太陽光発電設備が対象)が導入されたが、有効性については今後注目したいところだ。また、将来的に、欧州や米国ワシントン州のように、拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)の導入が日本でも議論されるかどうかにも着目したい。

参考文献

  1. IRENA and IEA-PVPS, “End-of-Life Management: Solar Photovoltaic Panels,” 2016. Accessed: Jan. 05, 2023. [Online]. Available: https://www.irena.org/publications/%202016/Jun/End-of-life-management-Solar-Photovoltaic-Panels ↩︎
  2. K. Komoto et al., “Status of PV Module Recycling in Selected IEA PVPS Task12 Countries 2022.” Accessed: Feb. 08, 2023. [Online]. Available: https://iea-pvps.org/key-topics/status-of-pv-module-recycling-in-selected-iea-pvps-task12-countries/ ↩︎
  3. Ministry of the Environment Government of Japan, “Taiyoukou hatsuden setsubi no risaikuru tou no suishin ni muketa gaidorain (dainihan) [Guidelines for Promoting PV System Recycling (The Second Edition)],” 2018. Accessed: Feb. 08, 2023. [Online]. Available: https://www.env.go.jp/content/900512721.pdf ↩︎
  4. Ministry of Economy Trade and Industry (METI) and Ministry of the Environment Government of Japan, “Taiyoukou hatsudensetsubitou no riyu-su, risaikuru, tekiseishobun ni kansuru houkokusho [Report on Reuse, Recycling and Proper Treatment of End-of-Life Renewable Energy Equipment],” 2015. Accessed: Feb. 10, 2023. [Online]. Available: https://www.env.go.jp/content/900535822.pdf ↩︎
  5. Ministry of the Environment Government of Japan, “Shiyouzumi saiseikanou enerugi-setsubi no kentou gaiyou [Assessment Overview of End-of-Life Renewable Energy Equipment].” https://www.env.go.jp/recycle/recycling/renewable/index.html (accessed Feb. 10, 2023). ↩︎
  6. Ministry of the Environment Government of Japan, “Taiyoudenchi mojyuru no tekisetsuna riyu-su sokushin gaidorain [Guidelines for Promoting Proper Reuse of PV Modules],” May 2021. Accessed: Feb. 08, 2023. [Online]. Available: https://www.env.go.jp/content/900517758.pdf ↩︎
  7. Agency for Natural Resources and Energy (ANRE), “Jigyoukeikakusakutei gaidorain (taiyoukou hatsuden) [Guidelines for Business Planning (PV Energy)].” Accessed: Feb. 09, 2023. [Online]. Available: https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_sun.pdf ↩︎
  8. Agency for Natural Resources and Energy (ANRE), “Information on the Act on Special Measures Concerning Promotion of Utilization of Electricity from Renewable Energy Sources [Saiene tokusohou kaisei Karen jyouhou].” https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/FIP_index.html#fip_seido. ↩︎
  9. Agency for Natural Resources and Energy (ANRE), “Haikitou hiyou tsumitate gaidorain [Guidelines for Decommissioning and Other Reserves].” Accessed: Feb. 09, 2023. [Online]. Available: https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/haiki_hiyou.pdf. ↩︎
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