コラム
太陽電池モジュールのリユースとリサイクルは、太陽光発電産業をさらにサーキュラー(循環型)、そしてサステナブル(持続可能)にするために極めて重要である。中には、撤去後にも寿命が残っており、修理・リユースが可能な太陽電池モジュールもある。しかし、太陽電池モジュールが破損していたり、使い古されている場合には、リサイクルがリユースの次の選択肢としてあがる。本記事では、太陽電池モジュールのリサイクルの基本を探る。
太陽電池モジュールは何で出来ている?
一般的に、結晶シリコン太陽電池モジュールは、ガラス76%(パネル表面)、ポリマー10%(封止材とバックシート)、アルミニウム8%(フレーム)、シリコン5%(ソーラーセル)、銅1%(インターコネクタ)、そして、残り0.1%以下は、銀(接触線)及びその他金属(スズや鉛) で構成される1。
太陽電池モジュールをリサイクルすべき理由は?
- 太陽電池モジュールには、環境や人体に安全でないとされる鉛、カドミウム、セレン等の有害物質が含まれる1。
- 太陽電池モジュールには、アルミニウム、銀、銅、ポリシリコン等、有価物が含まれる。 Rystad Energyの分析によると、使用済みモジュールから回収可能な原料は2030年には27億ドルを超え、2050年には800億ドル近くに及ぶ2。
- 太陽電池モジュールが埋め立て処分されることを回避することができる。世界各地で埋立地が不足してきており、太陽光発電を率いるアメリカや日本も例外ではない。例えば、 Waste Business Journalは2018年の記事で「次の5年間で、アメリカ全体の埋立容量は15%以上も減少する見込みである。つまり、2021年には15年分の埋立容量しか残っていないということである。」と報じている3。また、 日本の環境省が2022年に発表した内容によると、現在のペースでごみが発生し続けると、日本の埋立処分場(最終処分場)の残余年数は、22.4年である4。
- 太陽電池モジュールのリサイクルは、グリーンジョブの雇用創出につながる。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究協力プログラム(IEA PVPS)が発表した2016年のレポートによると、使用済み太陽電池モジュールの適正処理は産業成長を促し、官(政府、公的研究等)と民(太陽電池モジュール製造者などproducerに値する企業、廃棄物管理会社)共に雇用を創出する1。
太陽電池モジュールリサイクルの手順は?
通常、結晶シリコン太陽電池モジュールのリサイクル処理は、以下の(一部もしくは全ての)工程を伴う。
1) ジャンクションボックス、フレーム、配線等の除去
2) ガラス、シリコンウエハー等の剥離(サーマル(熱)、メカニカル(機械的)、ケミカル(化学的)処理)
3) シリコンセルや銀、スズ、鉛、銅等の特殊金属の分離及び精製5 6
太陽電池モジュールリサイクルの課題は?
- 高額なリサイクル費用:正確なリサイクル費用は場所やリサイクル方式によって異なるものの、太陽光パネルリサイクルは依然として高額である。例えば、アメリカでの太陽電池モジュールリサイクル費用は、モジュール1枚あたり25米ドル〜35米ドル程かかるのに対し、7北米(アメリカ、カナダ)における埋め立て処理はモジュール1枚あたり1〜2米ドルである8。
- 費用効率の高いデラミネーション(層間剥離)の整備:太陽電池モジュールは、厳しい気象条件に備えた耐久性を持ち、寿命は通常25〜30年と、長持ちするように設計されている。この耐久性が、太陽電池モジュールを費用効率的に分解することを難しくさせている。
- 高価な原料の回収:銀やソーラーグレードシリコン等の高価な原料の回収は、太陽電池モジュールをリサイクルするにあたり課題とされてきた。しかし、
ROSI
、TG Companies
、SolarCycle
をはじめとする企業が新しいリサイクル技術の開発に取り組んでいる。 - 回収及び輸送:多くの場合、使用済み太陽電池モジュールの回収には長距離輸送が必要となり、物流コストを押し上げる要因となる。EUのように、収集地点を拡充させることが不可欠である。
太陽電池モジュールリサイクル市場はまだ発展途上である。しかし、使用済み太陽電池モジュールの処理問題は、官民両方から注目を集めている。太陽電池モジュールリサイクルの規制については、別の記事で紹介している。
参考文献
- IRENA and IEA-PVPS, “End-of-Life Management: Solar Photovoltaic Panels,” 2016. ↩︎
- Rystad Energy, “Reduce, reuse: Solar PV recycling market to be worth $2.7 billion by 2030.” https://www.rystadenergy.com/news/reduce-reuse-solar-pv-recycling-market-to-be-worth-2-7-billion-by-2030 (accessed Jan. 24, 2023). ↩︎
- J. Thompson, “Time is Running Out: The U.S. Landfill Capacity Crisis.” Accessed: Jan. 25, 2023. [Online]. Available: https://www.wasteinfo.com/news/wbj20180514A.htm ↩︎
- Ministry of the Environment Government of Japan, “一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について.” https://www.env.go.jp/press/110813.html (accessed Jan. 29, 2023). ↩︎
- The U.S. Environmental Protection Agency, “Solar Panel Recycling.” https://www.epa.gov/hw/solar-panel-recycling#How%20Solar%20Panels%20are%20Recycled (accessed Jan. 25, 2023). ↩︎
- AE Solar, “SOLAR PANEL RECYCLING.” https://ae-solar.com/solar-module-recycling/ (accessed Jan. 25, 2023). ↩︎
- C. Libby and S. Shaw, “Solar PV Module End of Life: Options and Knowledge Gaps for Utility-Scale Plants,” 2018. ↩︎
- K. Wambach, K. Baumann, M. Seitz, B. Mertvoy, and B. Reinelt, “Photovoltaic (PV) Recycling, Reusing, and Decommissioning — Current Landscape and Opportunities for Standardization,” 2020. ↩︎