世界各国が再生可能エネルギーへの転換を加速させ、太陽光発電システムの導入が次々へ進む中、重要な課題が浮上する。これら全ての太陽電池モジュールは、撤去後、一体どのように処分されるのだろうか。太陽光はサステナブルな(持続可能な)エネルギー源であるが、寿命末期(End-of-Life: EOL)を迎えた太陽電池モジュールもサステナブルな方法で処理することはできるのだろうか。本記事では、使用済み太陽電池モジュールが廃棄される際の選択肢について、解説する。
リユース
太陽電池モジュールの中には、EOL到達前に交換または撤去されるものもある。さらには、一般的に25〜30年と言われる寿命の後に稼働状態のものもある。撤去された太陽電池モジュールの状態が良い場合は、中古太陽電池モジュールとして再利用できる可能性がある。通常、太陽電池モジュールのリユースは、清掃、点検、修理、発電効率に関するテスト等のステップを踏む。モジュールが寿命を待たずに撤去され、稼働できる状態にある場合は特に、第一の選択肢としてリユースを検討することが望ましい。
リサイクル
リユース不可能な太陽電池モジュールについては、リサイクルが次の候補として挙げられる。太陽電池モジュールをリサイクルすべき理由は多岐にわたる。埋立地へ送られる廃棄物量を削減できるだけでなく、アルミニウム、銀、銅、ポリシリコン等の有価物、そして鉛等の有害物質の回収ができる。太陽光パネルのリサイクル技術は発展途上であり、高額なリサイクル費用が課題として残る。しかしながら、太陽電池モジュールのリサイクル事業に参入する企業も増え、近年は新しい技術開発が進んでいる。
埋め立て処分
残念ながら、多くの太陽電池モジュールが埋め立て処分されているのが現状である。多くの国では、埋め立て処理は安価である上に、リサイクルやリユースに伴う複雑なステップが発生しないことが理由であろう。EU、米国カリフォルニア州やワシントン州など、一部の地域では、太陽電池モジュールのリサイクルを促進させるため、太陽電池モジュール廃棄に特化した法令も整備されている。しかし、その他多くの地域では、廃棄モジュールの埋め立て処分を回避するための政策が必要である。土地は有限であり、世界各地で埋立地が不足してきている。言うまでもなく、太陽電池モジュールには、鉛等の有害物質や資源価値の高い銀等も含まれる。地球環境に優しくサステナブルな使用済み太陽電池モジュールの処理を追求するためには、埋め立て処分は何としても避けるべきである。
保管
撤去後に、太陽電池モジュールが保管されるケースもあるが、保管には場所の確保が必要になるだけでなく、保管費用も伴う。また、太陽電池モジュールの普及拡大に伴い、将来的に十分な保管場所の確保が難しくなる恐れもある。さらには、稼働可能な太陽電池モジュールを保管することにより、中古モジュールとして使用する機会やそこから収入を得る機会も損失することになる。
太陽光発電が地球環境に良いことは、周知の事実である。しかし、太陽光発電を本当の意味でサステナブルで環境にやさしくするためには、太陽光発電業界をリニアエコノミー(直線型経済)からサーキュラーエコノミー(循環型経済)モデルへ転換させる必要がある。